GiftedHero_10_王子気取りのワラビー
人は
憎悪する。
どんなに
綺麗に
生きようとしても、
憎しみは
避けて通れない。
そして、
心の中で、
憎しみは
悲しみに
変わる。
悲しみは、
涙になって
積もりゆく。
こんなに
重くて、
痛くて
切ない……
先の尖った、
氷の塊のようなものだ。
でも
悲しみは、
いつか
必ず
癒えるよ。
緩んで、
溶けて、
その狭間から
喜びが
顔をのぞかせるんだ。
痛みが
大きいほど、
忘れられない喜びになる。
「喜び?
喜びなんて……。」
悲しみは、
堅くて
冷たいけれど、
いつも
意味を
隠しているから、
やっぱり
解かなきゃ。
中身を
さぐるには、
きっと
長くかかるね。
途中、
破片が
刺さったりして、
損した気分に
なっちゃうかも。
でも
それは、
絶対に
違うんだよ。
「痛いんでしょう?
それは損だよ。」
涙の中身は、
柔らかな光。
冷たい箱の中身は、
プレゼントだよ。
嬉しくなくちゃ、
プレゼントじゃないんだよ。
氷塊を
両手で包むと、
それは
時間をかけて、
静かに形を
変えるんだ。
そうでしょう?
あたためたら、
なじんで、
溶けて、
しみ込んで、
やがて
君の素になる。
破片だって
溶けるのさ。
そして、
えぐられた心の隙間を
満たしてくれる。
大変な時を経て、
ゆっくり深呼吸。
そこには、
必ず、
喜びが
微笑んでいるよ。
+++
「なんて、
少し
哲学的すぎたかな?
今日は帰るよ。
氷の中身を
置いて……ね。」
王子気取りのワラビーは、
扉の向こう側に
言いました。
返事は
無かったけれど、
それはそれで、
去り際を
キラキラと
演出するには、
彼にとっては
好都合でした。
しばらくして、
叩き上げのイタチが
静かに
ドアノブをひねりました。
誰もいない扉の前には、
水滴のついた
バラの花束。
叩き上げのイタチは、
少し眺めた後、
添えられた
メッセージカードを
拾います。
『氷の中身は
バラでしたが、
箱の中身は
あなたでしたね』
振り返り、
正方形の自宅を
見上げて、
叩き上げのイタチは
ため息をつきます。
体温を持ったその吐息は、
張りつめた
外の空気と
強く結んだ口元を
少しだけ
緩ませた後、
彼女の瞳に
そっと
滴を
載せたのでした。
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