GiftedHero_04_最年長のユニコーン

あの子は

かわいそうな子だ。


一見

なんでも出来るヒーローに

見えるけれど、


彼自身にしてみれば

それは

戸惑いを覚える程の

虚像。


社会的虚像と、

彼が思う実像との

ギャップに

もがき苦しみながらも、


権威に

見初められて

しまったからには、


立ち止まることは

許されない。


まるで

魔法にかけられたような

心地よさを、

ただただ

搾取するだけの

無責任な民衆。


そんな民衆が

作り上げた、


彼自身

望んでもいない

ヒーロー像。


その後追いを、

彼は今日も

強いられている。


あの子は

そもそも


輝かしい

虚像の

発端も、


彼自身から

虚像を

引きはがす術も

知らない。


何も知らない彼は

実像を

抱え込んで、


虚像を中心に

巻き起こる

賞賛の嵐に

混乱しながら、


搾取されるがままに

人生を

駆け抜けてきた。


だが、

何も知らない彼も、


いくら走っても

道脇に並ぶ民衆の目を

振り切れないこと、


つまり

いくら身体に鞭を入れたって

彼の苦しみは

取り除かれないことには

気付いていたはずだ。


それでも彼は、

精一杯

足を動かすことしか

出来なかった。


その理由は

おそらくふたつ。


ひとつは

権威の命を受けた

責任感から。


もうひとつは、


立ち止まり、

実像をさらけ出し、


虚像を求める民衆の目と

正面から向き合うことが


怖かったから。


あの子は、

だから


走りながらも

心の奥底に、


氷塊を

作ったのだろう。


いつか必ず迎える

息切れの時、


その中に

実像を

押し込めて、


彼は

自分を守ろうと

決めた。


それと、

せめて

彼自身だけは、


居場所を

与えてあげたかったのだと思う。


本当は弱くて

泣き虫で

寂しがり屋な、

彼の実像に。


しかし、

民衆は

許さない。


憧れという

キラキラとした感情を

盾に、

侵撃を

続ける。


片手間に作られた

氷の箱は

とてももろく、


いとも簡単に

砕き壊されてしまう。


溶けゆく破片すら

搾取され、


いよいよ

柔い実像を

刺される時は近い。


あの子も

きっと、

察しているのだろう。


+++


「怖いんでしょう?」


最年長のユニコーンは、

背戸口の向こうに

語りかけます。


「誰も開けないように、

 見張っててあげる。


 だから、

 背中を預けて、

 ゆっくり泣きなね。」


最年長のユニコーンの

言葉を受けて、


背戸口の向こうから、

すすり泣きの

嗚咽。


いくら

なんでもできるヒーローのように

見えたって、


どれだけ

求められたって、


支配人びいきのイルカは、

空を

飛ぶことは

出来ないのです。


どこまでも溢れ出る

支配人びいきのイルカの

涙は、


皮肉にも


民衆に降り掛かる

魔法の素に

なるのでした。

GiftedHero / IROKACOLORIS

イロカクロリ -creator iroka's portfolio